2010/10/31

Progress Report #3 : 一筋縄じゃいかない

先月あたりから少しずつフィールドワークに行けるようになりました。
現時点で気になっている産品=訳あり産品は、銀細工、トマト、山羊など。特に銀細工については既に職人グループのコミュニティが形成されているとのことなので、生産者側にアプローチしやすそうです。逆にトマトなどはたしかに生産は盛んなようですが、生産者をどう絞っていくのかわからない。これはもう巡り合わせですね。

いっぽう山羊については配属先のプロジェクトで家畜や畜舎を安価にて提供しているので、それに付随して付加価値を高めるアイデアがほしいという要求が出ています。正直なところ家畜を使ってなにかやるのは品質管理の難しさから慎重に考えたかったのですが、配属先のプロジェクトだし畜産農家にアクセスしやすいという利点もあったので、とりあえず近場を中心に見て回ることに。

畜産農家はオフィスから歩いて行ける範囲だけでも山羊2件、牛2件あります。バスやスリーウィール(三輪車)を使えばそこらじゅうにあります。それだけ継続して行われているプロジェクトということでしょう。

牛についてはミルクをとってミルクセンターに売っているそうです。まあ「当たり前じゃん」と思うかも知れませんが、ミルクセンターがあるというのはとても大きい。山羊は牛に比べて乳量が少ないし、ミルクセンターみたいに製品加工できる施設も近場にないので、いまのところ付加価値の付けようがないのです。そのため、この山羊を「なんとかしてほしい」というのが先方からの要請です。まあ無茶振り入りましたーって感じですが。

配属先プロジェクトの概要は、家畜を提供して、育ててもらい、仔山羊ができたらそれを二匹つがいにしてまた別の家庭に提供する。それ以降に生まれた分は自由に売ったりしていいですよ、ということらしい。山羊を売れば牛を買うことができるから、そうすればミルクを取ってそこそこ継続的な収入が得られるという青写真。

農家さんへの突撃インタビューによりそういう基本的な事情は聞けたわけですが、さてこちらからの情報提供となると、一人で回っていては何も進展しそうにない。そこで同ユニットの食品加工隊員K氏の助け船を借りて再度アタックしてみることにしました。この方は以前畜産の仕事をしていたということで、飼育環境などはまさに専門分野。なんという適材適所。家畜を見るや否や「こいつ、のど渇いてる」といって水を飲ませ始めたのは流石でした。

さて、飼育環境については本当に色々な指摘をしてもらい、それをまとめて指導していけば家畜の品質向上には寄与できるかもしれない。ただし乳製品の加工となると品質管理が難しそうというのは同意見。管理するのはランカ人になりますので。どの要請でもそうですが、うちらに任されるのは「ここにこういう問題があるから、なんとかしてほしい」という半分無茶振りみたいなのがほとんどです。あんまり過剰に期待させても悪いので、これくらいは出来るけど・・っていう線引きがお互いにとって大事。

とにかく、見に行って分かった山羊農家の問題点としては
・飼っていても収入にならない
・飼育環境が悪い。プロジェクトで畜舎の材料等を提供してもその通りに作らない。
・仔山羊が生まれても売らない(そもそも売りたくないらしい)


それって・・要するに、ただ飼っているだけなんじゃ・・

という疑問もよぎりますが、なんとかしてくれと言われてるので、現状可能である飼育環境改善から入っていくのセオリーかな。フィールドを周るようになってから急に周りが「目に見える成果」を求め始めたのですが、当初の予想通り、家畜というテーマで一村一品を攻めるのはたぶん無理ってか危険。早くも期待と現実に差が生じ始めています。

まあKさんが飼育指導している間、聞いていたのはうちらとオフィサーだけでしたから。当の農家さんはお金をくれないとわかった途端に風呂入りにいってしまいましたから。

理想論を言えば彼らと信頼関係を結ぶのが一つの「仕込み」になるんでしょうけど、文字通り、一筋縄じゃいかないみたいですね。

2010/10/25

Progress Report #2 : 何処に何があるのか

任地に派遣されて2,3ヶ月の間、まずは活動のネタになりそうな情報収集の話を。
自分の配属先は貧困層の生活支援を行っている部署なので、この広い地域の何処に何が
あるのかということは、職員に情報を募るのがてっとり早い。
そこで、週一や月一で開催される定例会議で自分の活動をアピールしていくことを繰り返していました。

日本人が現地語を話すことが珍しいので、これにはそれなりの反応が返ってきます。過度な期待をさせないよう、なるべく見栄をはらないように気を付けつつ、興味半分の彼らから情報は色々と得ることができました。それっぽいことを言ってしまったがために輸出関係者だとか話が大きくなってしまったこともあり、そのへんは反省点。

何処に何があるのか、という出発点の情報を得たあとはどんどんフィールドに赴いて生産者と顔合わせをしていきたいわけですが、しかしこれを職員の人にお願いしても、基本は「今度連れてくよ」のオンパレードでそれが実現することはなかなかありませんでした。この段階で少し立ち往生。

半ば飼い殺しのような状況がしばらく続いたので、少しアプローチの仕方を変更することに。コラムで書いたかどうかわかりませんが、こちらの人は公私ともに計画を立てるという習慣がとても薄い。そのため「今度行きたいので予定を調整しましょう」という形ではなかなか話が進まない。むしろ「明日行くからよろしく」というやり方のほうが余程こっち流だとわかりました。
さらにオフィス職員よりもなるべくSDOやGNと呼ばれる地域担当職員に直接コンタクトできると便利。誰がどの地域の職員か把握しておくのは結構大変ですが(なにしろ地区数が70くらいあるので)、目ぼしいところは連絡先をもらっておくようにしています。

彼らと直接コンタクトが取れれば、あとは自分にとって唯一の交通手段であるバスルートを把握して、そこに待ち合わせてもらう。もてなし好きな農村文化の風習も手伝い、急な訪問でも野ざらしにされる可能性は低いはず、という目論見です。

話は変わりますが、自分たちの活動ユニットはプログラムオフィサー(短期隊員)、デザイン隊員、食品加工隊員、そして自分と同じ村落隊員3人で構成されています。食品・畜産関連については食品加工隊員と、手工芸などの製品についてはデザイン隊員といった形で指導やアイデア出しを連携してやっていくことができるわけです。今後はこの専門性を持つ人たちを頼りつつ、繋げつつ、いよいよ村落隊員らしいアクションを起こしていくことに・・なるのかな。

2010/10/17

#15 : small world


この町には日本人が自分一人しかいないため、ある意味では自分が日本代表みたいなもの。
自分のイメージ=日本人と直結しかねないので、なんだかんだ評判というやつを気にして生活しています。

ところが今の自分が現地で尊敬を集められているかというと、実際そんなことはない。


せいぜい「日本人だから金持ってんだろうな、こいつ」程度か、もしくは現地語が話せないことで「言葉すらロクに話せないやつが来た」と思われているかもしれない。こっちの人にとって比較対象が全くないというのが非常に苦しいところだ。

赴任して一番最初の自己紹介のときに、学歴についての質問を受けたあたりから既に歯車は狂っていた。ここも他の途上国と同様、学歴が社会的地位のかなり大部分に影響する。それはもう、日本が学歴社会だのどうの言ってるのがかわいらしく思えるくらいだ。そしてその時自分は、まあ一番最初だったので謙遜もあって「いやー大したことないんですけど」とつい言ってしまった。


が、完全に言葉通り受け取られました。
その時点で「こいつ馬鹿」確定です。本当にありがとうございました。


それ以降は「低学歴」のレッテル以外にも「英語が全く話せない」という追加事項(しかも半分事実だからなお苦しい)が足され、ここのところフォローに必死。実際今日も学歴や学校の話になって、日本人の数学力について質問をされた。こっちの生徒の学力は詳しく知らないが、まあ日本には受験戦争なんてものもあるし、小中高12年間勉強するからそれなりなんじゃないの、とは答えておいた。もはや一切の謙遜なし。というより若干ムキになる自分。
するとしばらくして「ちょっと問題を作ったから解いてみてくれ」と紙とペンを渡された。なんなんだ暇なのかお前は。しかしその問題とやらが普通の分数の足し算掛け算・・・この野郎、絶対におれを馬鹿にしてやがる。ちょっとカチンときたので、こんなの紙もペンもいらないでしょって言って、めんどくさいから口頭で答えてやった。



が、普通に間違ってしまいました。本当にすいませんでした。

2010/10/10

#14 : 科学と宗教


スリランカ人といえば、とにかく質問好きな性格。結構答えにくい質問でもズバリ(空気を読まずに)質問してきて困るのですが、なかでも特に宗教についての質問は答えにくい。

こっちの人は会って話して2,3言目には「宗教は?」って必ず聞いてくる。急に聞かれても、大抵の日本人はパッと答えられないんじゃないでしょうか。

そしてこのとき「無宗教です」って答えるのはNGらしい。
「無宗教」=「無神論者」みたいな感じで受け取られ、軽蔑される可能性があるとのこと。
スリランカの場合は敬虔な仏教国のため、仏教徒というと比較的ウケがいいです。
まあ別にクリスチャンであればそう答えれば問題ないし、新興宗教でもなんでも答えられればいいんですけど。要は答えられることが重要。

ただし仏教徒といった場合、日本の仏教徒とこっちの仏教はものすごい別物なので、その辺の説明が非常にめんどくさい。大乗仏教と小乗仏教の違いは理解しているようですが、それを差し置いても生活との絡み具合が全然違います。仏教といった途端にやたら食いついてくる人もいて、そういう人にいちいち説明しているとリアルに日が暮れる。

そんなときに便利なのが「神道」という答え方。日本の宗教の一つとしてこちらでも名前は知れていて、しかも良い感じに曖昧。日本の神仏融合の価値観をうまく説明するには一番快適です。

僕も最初のほうは仏教徒といっていたのですが、「仏教徒なのになぜ寺に行かないんだ?」とか「仏教徒なのに・・」云々の質問がめんどくさくなってきたので、いまでは日本仏教、もしくは神道と答えるようにしています。一応仏教の考え方も取り入れているんだよって説明をすれば、印象としても良いし。

なおも神道について説明を求められたら、「葬式は寺で、結婚式は教会でやるような宗教だよ」とか
「神道には八百万の神様がいるんだ」とか言ってやるとわかりやすいです。とりあえず「理解できない」ってことを理解してもらえます。これ大事。

日本人は宗教の概念がないだとかいって批判的に言う人もいますが、僕はただ特定の名前を付けていなかったりカテゴライズしていないだけなんじゃないかと思います。カテゴライズ好きな日本人をしてカテゴライズ出来ないほど多様化した神仏融合の概念ゆえに「無宗教」で片付けてしまっているだけではないでしょうか。どの宗教か、が重要な意味を持つ海外でも、聞かれたときにだけ誤解なく答えられるようにしておけば、日本人の宗教観はコンプレックスにならなくて済むはずです。

写真はキャンディにある仏教徒のメッカ、仏歯寺。
スリランカに観光に来た人は必ずといっていいほど訪れるのではないでしょうか。
ここでは宗教が本当に生活の一部になっているのを感じます。

2010/10/04

Progress Report #1 : API

赴任後3ヶ月が経ちました。そろそろ活動の方針を立てて、実質的なアクションを起こし始めないといけない時期にきているので、これからはコラムに加えて不定期で進捗状況をブログにアップしていこうと思います。


現在自分が所属している部署は貧困層の生活支援や社会開発などを行っているサムルディ公社というところです。JICAボランティアとサムルディの共同プロジェクトとして、キャンディ地区での一村一品運動をユニット(チーム)で行っているのですが、その一角としてパータヘーワーヘタという地域を担当しています。

プロジェクト開始当初は、生産者グループを組織して特産品を定めた上で進めていく計画だったそうですが、組織したコミュニティがうまく機能しなかったという問題があり、現在は個人の生産者を対象にアプローチしていく手法に変わっています。

一村一品運動は日本の大分県で始まったプロジェクトで、文字通り一つの村に一つの特産品を作って地域の活性化を図ろうという活動です。しかし当初計画していたコミュニティレベルでの活動が止まってしまったため、サムルディのプロジェクトというよりはJICAボランティア側の活動という色合いが濃くなりました。そのためアプローチの仕方もグループから個人へ、その代わり「一品」に限らず改良の余地と意欲があるものから順々に手を付けていく方向へシフトしました。

そうしたプロジェクトの変遷の後に自分は派遣となり、要請にある一村一品という言葉に拘らない経済開発、あるいは社会開発が要求されそうです。実際、一村一品という言葉もあまり適当でなくなってきたので、ユニット名をOVOPからAPIへと変更して現在に至ります。

赴任後2ヶ月は地域の情報収集とフィールド調査に費やしました。なんとなく可能性のありそうな資源は浮かんできたので、今後はその生産者により直接的にアプローチしていくことになりそうです。