2010/11/14

#17 : マータラでグータラした話

先週末、マータラという南海岸沿いの町でサッカー部の交流試合がありました。サッカー部はスリランカ在住の日本人で構成されていて、協力隊関係者だけでなく現地企業の社員さんや社長(!)さんなど、なかなか豪勢なメンバーで構成されている一団です。

いつもは日曜日に首都スリ・ジャヤワルダナプラ・コッテで練習しているんだけど、今回はサッカー隊員けーすけさんの赴任先マータラで遠征試合もとい小旅行を組むことになった。

ちなみにいまさらですけど、スリランカの首都の名前は世界一長いものらしい。

スリ・ジャヤワルダナプラ・コッテ。

少し前まではコロンボが首都だったのですが、近年になってコッテに移したため、以前としてほとんどの首都機能はコロンボに置かれている状態、つまり名前はインパクトあるけどそれ以外は実質何もないようなところです。しかもアルファベットにして23文字という長すぎる首都名、当然ながらフルネームで言われることはなく、ほとんどの人は省略して「コッテ」と呼んでいます。威厳なし。

そんな空気都市コッテの広いグラウンド(写真参照)でサッカー部は活動しています。

それはさておき、今回の活動場所はマータラという海岸沿いの海が綺麗な町です。私の任地キャンディからバスで行こうとすると、コロンボを経由して8時間くらいかな。移動だけで体力ゲージが半分くらい削り取られる気がします。

試合は地元のクラブチームとアーミーチームに一勝一敗でした。細かい試合内容には面倒なので触れません。日本チームはサッカー隊員はじめ経験者やサッカー歴40年のおっさんなどかなりレベル高いと思うのですが、相手も運動神経とガタイが半端じゃない猛者どもが揃っていたので、右に左に吹っ飛ばされまくって終了。今週一杯は筋肉痛を引きずりそうです。やっぱりフィジカルないとキツいなー。

宿泊はゲストハウスだったんですが、南のほう特にゴール近辺は金持ちっぽい観光客が多くて、リゾートが充実しているから羨ましい。ホテルのグレードもなんだか高めだし、食事もなかなか。任地に帰る足が重いのは疲労のせいだけではあるまい。

休日を全力でリフレッシュしたあとは、無理難題が山積みの山の町キャンディが待ち受けているのです。こっちはこっちでタフなゲームになりそうだ・・・

2010/11/10

#16 : 時の回廊

こっちに来てから初めて本格的に体調を崩した。最近少し涼しくなってきたから気をつけようと思っていた矢先でした。症状は普通の風邪に加えて、胸のあたりがズキズキ痛む。ちょっとこの痛みが怖かったので、念のため仕事は休むことにした。

これも初めてのこと。

朝一番に病院にいってみてもらったところ(といっても服の上から聴診器当てられただけだが)肺関係、ただの風邪、深刻なものではないということで、色々と薬もらってきました。

家に帰って薬飲んだらウトウトしてきたので、朝からゆっくり眠ることにした。体を横にすると胸の痛みが増すため、昨日からあまり熟睡できていなかったのだ。途中なんだか色んな(しかもグロそうな)夢を見た気がするが正午までなんとか爆睡。

そこに電話がかかってくる。

正直めんどくさいんで切ろうかと思ったけど、夢の内容が火葬場で生身の人間が焼かれるシーンにさしかかってたのと、電話の相手が数少ないシンハラ人の友達(♀)だったのでとりあえず出ることに。基本こっちの人の電話は世間話が大半で、余程ヒマなときでないと電話は切ってしまうのだ。案の定今回も風邪ひいただの週末どこいくかだの、とりとめのない世間話ばかりだったのだが、突然、

「来年、結婚することになったんだけど」

というまさかのカミングアウト
で、胸の痛み増幅(↗20%)

どうやら2年半くらい付き合った末の恋愛結婚らしい。いやあなた彼氏いないって言ってたでしょうがこの野郎。前に自身の結婚観についてやたら語っていたので不思議に思っていたんだが・・ちなみにまだ23歳。流石はこちらの伝統的家庭ですね。

なんか一人でボーっとしていると色々とセンチメンタルな物思いに耽ってしまいそうなので、ふと読みかけだった「ノルウェーの森」の下巻を読むことに、午後の時間を費やそうと決める。精神的な憂鬱を満たすには小説や映画を見るのが一番だし、この本はそんな午後に読み進めるにはうってつけの内容だと(少なくともその瞬間は)思ったからだ。

しばらく読んでなかったので上巻の内容を思い出しながら読まなくてはならなかったが、それでも物語の一番最初の部分はなんとなく覚えている。37歳の主人公が飛行機に乗っていて、そこでノルウェーの森の音楽が流れる。それを聞いた主人公が精神的に動揺し、自身が20歳前後だった過去を回想するといった流れだ。That's センチメンタリズム。

今年25歳になった自分としては、悩める主人公ワタナベ君にも、達観した生き方をする永沢さんにもあまり深く自分を重ね合わせることができなかったわけだけれど、なんとなく、この二人は物語の最後で再会しそうだな、なんて予想というか期待をしていた。

ところがあのラスト。救われねぇ
胸の痛み更に増幅(➚50%)

おそらく20代前後の自分であればあのラストの一節にはそれなりに感化されていたでしょうが、今の自分はあんな風に迷える青春を持っていないし、かといって永沢さんほどクールな生き方もできようがない。落ち着きどころとしては、あの二人が再会して終わってほしかったのだ。そしてそのラストシーンには主人公の取り巻き程度にしか扱われていない哀れな女性陣は一切登場しない。一生青春の袋小路から抜け出せないのだろうか・・あの青年は。

こちらに来てから、少し自分の考える時間が増えたのか、色々なことを回想します。
そのなかで、何回もリピートされるシーンもあれば、まったくされないものもある。
興味深いのは何回もリピートされるシーンの大半は、到底記憶に残らないはずだった些細な出来事だったりすることです。そしてまったくリピートされないものの中には、あの小説のノルウェーの森のように、あるきっかけで突然思い出すものがあって、それがものすごく大切なもののように思います。

ここでの生活は新鮮さと自由さが相まって、大学生活に近い感覚を覚えます。なのでここではなるべく「どうでもいい出会い」を繰り返そうかと思っています。

主人公はいつか永沢さんと再会したとき、どんな表情でそれを向かえるのでしょうか。ある種対局である種似た者同士の彼らの再会こそ、物語の終着点にふさわしい。彼の彷徨える魂の終着点にふさわしい。自分もそんな出会い、というか再会をしてみたい気がします。

嗚呼、胸の痛みはまだまだ続きそうです。